もののけ姫の時代設定は複雑?

もののけ姫の時代は何に基づいているのでしょうか?
この疑問は、多くのファンが抱く共通の問題です。
映画の背景には、縄文時代と室町時代の融合が隠されており、その深い理解が求められています。
しかし、その時代設定は複雑で、一筋縄ではいかないものです。
この記事では、その点を明確にし、もののけ姫の魅力をさらに深く理解するための解説をしています。

この記事で判ること
  • もののけ姫の時代背景が縄文時代と室町時代の融合であること
  • アシタカの村の縄文時代の文化とシャーマニズムの影響
  • 室町時代の貨幣輸入と流通の描写と歴史的背景
  • 鉄砲の描写における室町時代の武器としてのリアリティ
目次

もののけ姫の時代背景:室町時代の描写とその理由

宮崎駿監督の「もののけ姫」は、歴史とファンタジーの融合が鮮やかに描かれています。
鉄砲のリアリティや時代背景の深い関連性が、映画の世界観に深みを与えています。
このセクションでは、映画の中での鉄砲の描写や場所と舞台設定について、その歴史的背景とともに解説します。

もののけ姫の時代は室町時代

『もののけ姫』の舞台は室町時代であると、スタジオジブリが公式に発表しています。
この時代設定は、映画内での石火矢(現代でいう鉄砲のこと)の登場や、タタラ場の人々の服装など、室町時代の日本を感じさせる描写が随所に見られるためです。
しかし、シシ神などの神々の存在は、縄文時代のシャーマニズム(自然霊信仰)を感じさせる部分もあります。
このように、室町時代と縄文時代の融合が描かれているのが特徴です。

室町時代という時代背景は、中国で元王朝が滅び、明王朝が誕生した時代と重なります。
この時期には、明王朝が日本との交易を望み、日本には明から様々な物品や思想、文化が流れ込んできました。
新しいものが次々と日本にもたらされ、世の中が変化していったのです。この変化の中で生きている人々の姿を、宮崎駿監督は面白いと感じたのでしょう。

この複雑な時代背景が、『もののけ姫』の深みを増しています。
室町時代の描写と縄文時代の要素の融合は独特の世界観を生み出し、観る者に多層的な解釈を提供しています。

宮崎駿監督が室町時代を選んだ理由

もののけ姫の一コマ

Studio Ghibli

宮崎駿監督が室町時代を舞台に選んだ理由は、この時代が日本の歴史における混乱と流動の象徴であると捉えたからでしょう。
室町時代は南北朝から続く混沌の中から今日の日本が形成されていく時代でした。
監督自身は室町時代を「おもしろい時代」と表現しており、この時代が最も混沌とした時代であったと考えているようです。

宮崎監督の視点から見れば、室町時代は人々が主義主張から利益や損得で動くように変化した時代であり、その変化が興味深いと感じたのでしょう。
特に、「女たちが自由でかっこいい」という点も大きなポイントでした。
この時代の自由で大胆な女性の存在は、監督の作品に欠かせない要素とも言えるでしょう。

さらに、室町時代は武士と百姓の区別が定かではなく、女性たちもよりおおらかで自由であったとされています。
このような流動的な時代背景は、監督の「生きろ」というメッセージを強く反映しているとも言えるでしょう。
この選択は、監督の時代劇への強いこだわりから来ているのかもしれません。

縄文時代の文化と信仰の描写

もののけ姫には、縄文時代の文化と信仰が描かれている部分があります。
主人公アシタカの村は縄文の文化を引き継いでおり、ヒイ様などのキャラクターは縄文時代の巫女を連想させます。
このように、室町時代の描写と縄文時代の要素が組み合わさっているのがこの映画の特徴です。
縄文時代のアニミズム信仰は、物語との関連性が理解しやすいものとなっています。
アニミズム信仰は万物に魂が宿るとする考え方で、石や草木にも神が宿るとするものです。
この自然信仰は、自然を破壊して発展するたたら場とは対照的で、エミシの一族の村は縄文の色を色濃く描いているように感じられます。

縄文時代の生活とシャーマニズムの影響

物語の冒頭で登場するアシタカの生まれ故郷の村は、縄文時代の文化をそのまま引き継いでいると考えられます。
アシタカたちの服装や考え方、生活の様子などは、まさに縄文時代そのままです。
定住して稲作をするのではなく、狩猟と採取で生活するのが縄文時代の特徴です。
しかしアシタカたちは、朝廷に従わず独自の文化を守り続ける「まつろわぬ民」なのでしょう。
中でも、アシタカの村で指導的立場のヒィ様は、縄文時代の巫女を連想させる存在です。
縄文時代は、シャーマニズムが一般的だったといわれています。
シャーマニズムは原始宗教の一つで、大自然に存在する神々と交信する巫女(シャーマン)が、宗教的指導者として人々を率いていたとされています。
この独特の融合が、映画の世界観をより一層奥深いものにしています。

もののけ姫の時代考証

もののけ姫の時代設定は、室町時代と縄文時代を融合させているのが特徴です。
宮崎駿監督が室町時代を選んだ理由や、この混乱と流動の象徴である時代が、映画の深みを増している様子を紐解きます。

鉄砲の登場

宮崎駿監督の「もののけ姫」における鉄砲の描写は、室町時代の武器としてのリアリティを追求しています。
そして、映画内で登場する鉄砲のような石火矢は、中国の明時代の火槍がルーツであり、大砲の原型とは異なる描写がされています。
エボシは明ルートの石火矢を改良させているという設定です。

この描写の背後には、歴史的な事実が反映されています。
日本への鉄砲の伝来は一般に「1543年の種子島、ポルトガルから火縄銃が伝来した」とされていますが、実際には13世紀頃から明では石火矢が普及していたとする説が存在します。
倭寇(海賊)を経由して明由来の石火矢が日本に伝来しているというのは、史実を踏まえても違和感のない設定で、エボシには倭寇の妻だったという裏設定が存在するため、辻褄が合います。

このように、「もののけ姫」の鉄砲の描写は、単なるフィクションではなく、歴史的背景と深い関連性を持っています。
室町時代の武器のリアリティを追求することで、映画の世界観に深みを与え、説得力を高めています。

場所と舞台設定

もののけ姫 こだま

『もののけ姫』の舞台設定は、日本の美しい自然が豊かに反映されています。
特に、スタジオジブリが公表している「屋久島」と「白神山地」が大いに参考にされた場所となっています。

屋久島は、映画の中で「こだま」という木の精霊が登場する森林の描写のモデルとされています。
宮崎駿監督が構想に行き詰まり、一度すべてリセットするために向かった場所でもあると言われており、『もののけ姫』の誕生のきっかけともいえる場所です。

一方、白神山地は、エミシの里山の舞台となった場所で、秋田県北西部と青森県南西部にまたがる山岳地帯です。
この場所は、世界遺産にも登録されており、ファンからすると一目見ただけで「もののけ姫だ!」と分かるほど雰囲気が作品と合っています。

これらの地域は、1993年に揃って日本初のユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録されたことで知られており、観光客だけでなく『もののけ姫』のファンも多く足を運ぶそうです。

作品に出てくる描写が実際に目で見れるととても興奮しますよね。
『もののけ姫』をご覧になったら、機会があれば実際に足を運んでみてはいかがでしょう?

時代考証と宮崎駿監督の解釈

宮崎駿監督の『もののけ姫』における時代考証と独自解釈は、室町時代の変革と混乱を鮮やかに描いています。
監督はこの時代を「面白い時代」と表現し、その理由として、人々が利や損得で動くようになったこと、そして「下剋上」の精神が広まったことを挙げています。
この時代は、中国の明王朝との交易が活発化し、新しい物品や思想、文化が日本に流れ込んだ時代でもあります。
監督は、このような変化の中で生き抜いていく人々の姿を描くことで、歴史とファンタジーの融合を実現しています。
映画では、新しいものが次々と日本にもたらされる室町時代を描いており、人々がそれらを受け入れたり、反発したり、日本風にアレンジして取り入れる様子が表現されています。

このように、『もののけ姫』は、失われつつある過去と訪れる新しい時代との過渡期を描いた素晴らしい作品であり、こうした時代背景についての知識があれば、より深く楽しむことができるでしょう。

もののけ姫の時代と文化

もののけ姫 ジコ坊

貨幣経済の進展や縄文時代のアニミズム信仰など、時代と文化の交差点が描かれているのが、映画『もののけ姫』の特徴です。
このセクションでは、映画の中での貨幣輸入や縄文時代の関係など、複雑なテーマ性を解説します。

室町時代における貨幣経済の描写

映画『もののけ姫』では、室町時代における貨幣経済の進展が巧妙に描かれています。
この時代、日本は国内で貨幣を鋳造しておらず、外国の貨幣、特に永楽通宝などが重要で、日明貿易によって大量に流通しました。
結果として、この貨幣の流通は一般人にも貨幣経済を浸透させ、利益という概念を具現化しました。
作品の中で主人公アシタカが訪れた村では、庶民が貨幣を普通に使っており、この貨幣経済の発展が人々に「利」の概念を生み出していることが描かれています。

エミシの一族と貨幣経済のギャップ

また、アシタカが砂金と米の物々交換を申し込むシーンでは、彼が貨幣経済に馴染みがないエミシの一族の出身であることが描かれています。
この描写は、室町時代に貨幣経済が進んでいたことを反映しており、辺境の地のエミシの一族とのギャップを巧みに表現しています。
この時代の貨幣輸入と流通は、日本の経済と文化に大きな影響を与えました。
鎌倉時代以前にも中国からの貨幣輸入は存在しましたが、ごく少数であり、一部の上流階級でしか利用されていませんでした。
しかし日明貿易が活発になることで、貨幣が大量に流通し一般人にも浸透していきました。
この描写は、室町時代の経済と文化の変革を象徴しており、歴史的背景と映画の中の描写が巧妙に組み合わされています。

「もののけ姫の時代」まとめ

『もののけ姫』は、縄文時代と室町時代の融合を巧妙に描いた映画です。
主人公アシタカの村は縄文の文化を引き継ぎ、シャーマニズムやアニミズム信仰などが描かれています。
一方で、室町時代の武器や貨幣経済の進展なども鮮やかに表現されており、宮崎駿監督の独自の解釈が光ります。
舞台設定には、屋久島や白神山地など日本の美しい自然が反映されており、歴史的背景と映画の中の描写が絶妙に組み合わさっています。
この記事では、もののけ姫の中で室町時代の変革と混乱、そして縄文時代の文化と信仰がどのように描かれているのからかについて解説しました。

この記事のトピック

  • もののけ姫の主人公アシタカの村は縄文時代の文化を引き継ぐ
  • 映画における鉄砲の描写は室町時代の武器としてのリアリティを追求
  • 宮崎駿監督は室町時代の変革と混乱を鮮やかに描いている
  • もののけ姫では室町時代における貨幣経済の進展が巧妙に描かれている
  • 映画の舞台設定は屋久島と白神山地が参考にされた
  • もののけ姫の時代背景は室町時代と縄文時代の融合である
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